研究グループ紹介

研究グループ紹介

循環器研究グループ(センター病院)紹介

木村一雄教授、日比潔准教授を中心とする研究グループでは、おもに虚血性心疾患、とくに急性冠症候群(ACS)における病態解明、治療の検討を行っている。

  1. 詳細な病歴聴取をもとに心電図を用いたACS診断学の研究。
  2. 冠動脈内の詳細なイメージング(血管内超音波検査(IVUS)、光干渉断層法(OCT))を用いた研究。
  3. 急性心筋梗塞や急性心不全患者の心エコーや心臓MRIを用いた研究。
  4. 持続血糖測定、酸化ストレスマーカー、血小板機能検査、血管内皮機能検査、腸内細菌叢検査、骨格筋・脂肪量測定による動脈硬化や心筋疾患の病態解明の研究等を行なっている。

これらの成果はアメリカ心臓協会(AHA)やアメリカ心臓病学会(ACC)、日本循環器学会や日本心臓病学会などで数多く発表し、英文誌にも多数掲載されている。
当センターは虚血性心疾患や心不全に関する多施設共同研究にも積極的に参加している。
また、これら研究成果をもとに日本循環器学会において虚血性心疾患を中心に5つの循環器病の診断と治療に関するガイドライン作成を担当している。

虚血性心疾患・末梢血管疾患・心不全研究グループ紹介

石上友章准教授、菅野晃靖准教授を中心とする研究グループでは、虚血性心疾患・末梢血管疾患、血管の再生医療、慢性心不全・心肥大など臨床上未解決な問題を研究の主要課題とし、それら未解明の問題の解明を目的とした臨床研究を行っています。
虚血性心疾患では関連病院が多いことを利用して積極的に多施設研究を行っています。
末梢血管疾患(PAD)については維持透析症例を含めたPADの病態、発症危険因子、PTA施行後の予後予測因子の検討、PTA施行後の薬剤による再狭窄率の減少を目指した研究を行っております。
虚血性心疾患については慢性腎臓病を有する虚血性心疾患患者の予後を心筋シンチグラムで検討すること、3D-CTによる冠動脈疾患の評価と冠動脈造影検査との比較検討も行っています。
慢性心不全研究では慢性心不全の約半数に認められる拡張機能障害心不全の左室リモデリング、病態、予後予測因子、outcomeについて臨床的研究を行い学会誌に発表しています。
これを更に発展させた大規模研究として横浜市立大学第二内科関連の16病院循環器内科の参加を得た「慢性心不全の病態および予後に関する調査研究」を遂行しており、拡張機能障害心不全の病態の解明と治療法の確立に努めています。
また実験動物モデルを用いて、慢性心不全で惹起される心室リモデリングと、コラーゲン、MMP、TIMP、サイトカインとの関連性を検討している。
更に、FDG-PETを用いた慢性心不全における心筋糖代謝の評価、3D-CTを用いた冠動脈疾患の評価、遺伝子多型と循環器疾患といったテーマも追求しています。
  循環器再生医療については、現在のところは、バージャー病や下肢閉塞性動脈硬化症(ASO)患者さんに対する血管再生医療を行っており、将来的には虚血性心疾患に対する心筋再生医療も視野に入れています。

本態性高血圧症成因研究・細胞治療グループ紹介

准教授の石上友章博士のグループは、本態性高血圧症の成因の解明、本態性高血圧症の診療の最適化にむけて研究を推進しています。
本症の成因における腎性機序(Guyton説) に着目して、分子生物学・分子遺伝学的な解析を進めています。
これまでに、ヒトのアンジオテンシノーゲン(AGT)遺伝子と本態性高血圧症との関連を検討し、米国ユタ州ユタ大学エクルズ人類遺伝学研究所J.M.Lalouel教授、東京医科歯科大学難治疾患研究所中島敏晶助教授らと国際共同研究を推進してきました。
近年は、近位尿細管(PT)におけるAGT遺伝子、結合尿細管(CNT)におけるレニンから構成される尿細管レニン・アンジオテンシン系の系統的な解析、尿細管レニン・アンジオテンシン系の標的と考えられる集合管における、上皮性ナトリウムチャンネル(ENaC)-Nedd4L- Proteosomeシステムの中核を構成するヒトNedd4L遺伝子とその分子多様性の病態生理学的な意義を明らかにしてきました。
C57Bl6/Jマウスは食塩感受性高血圧を呈することで知られていますが、本モデルでは、近位尿細管細胞でのAGTが異常に過剰分泌されていることを明らかにしました。
Nedd4L遺伝子の分子多様性と高血圧症への関連をげっ歯類からヒトのレベルまで検討し、その詳細を明らかにするとともに、Nedd4L遺伝子の細胞膜結合ドメインである C2ドメインに対する結合タンパクのクローニングに成功しました。
これまでの、ヒトアンジオテンシノーゲン遺伝子 M235T多型や、そのプロモーター領域の遺伝子多型(G-6A, T68C)が相互に完全連鎖不均衡にあり、本症の発症に関与しているとするこれまでに明らかにした成績とを合わせて、本症の発症メカニズムのさらに解明し、究極的には、トランスレーショナルリサーチによる臨床応用を目指しています。
先進医療に対する取り組みとしては、『no option末梢動脈疾患に対する骨髄幹細胞を用いた、細胞治療』が、厚生労働省に認可されています。

腎臓・高血圧ゲノム研究、臨床疫学グループ紹介

平和伸仁准教授を中心とする研究グループでは、臨床研究から基礎研究まで幅広い研究を行なっている。
特に臨床の病態を明らかにするとともに、そこから発見された成果を基礎研究へと発展させている。

  1. 本態性高血圧、IgA腎症、腎不全関連遺伝子の解析
    腎臓病・高血圧にかかわる感受性遺伝子の検索に努め、テーラーメード医療の実現を目指している。
    すでに、ミレニアムゲノムプロジェクトにも参加し、全国規模での「高血圧の成因遺伝子の同定」に関する研究に寄与した。
    東海大学分子生命科学教室との共同研究によりさまざまな疾患のゲノムワイド解析も行なっている。
    また、愛媛大学、滋賀大学との共同研究による大規模なコホート研究も進行中である。
    また、東海大学、大阪大学、新潟大学とともにIgA腎症の関連遺伝子解析を行なっている。
    これらの成果から得られた遺伝子を改変したモデルマウスを作成し、テレメトリー法による血圧変動の解析、mRNAや蛋白発現の解析、組織学的検索などを行い、発見した遺伝子の役割を解析している。
  2. 高血圧、慢性腎臓病の病態解明および疫学的研究
    慢性腎臓病と無症候性脳梗塞の関連や血管系との関連など心腎連関、脳腎連関について疫学的に解析している。
    特に高血圧や喫煙などの生活習慣が腎・血管系に与える影響などについても重大な関心をはらい研究している。
    また、24時間血圧、自律神経活動、QOLなどの意義について様々な疾患との関わりを解析している。
    さらに、ネフローゼ症候群や慢性腎臓病に対する新しい治療法の確立など実臨床に即した研究を行なっており、薬剤の特徴を生かした治療法を検討している。
    また、新しく開発したプロスタグラジンD合成酵素の役割などについて臨床的な意義や有用性についても東京大学や大阪バイオサイエンス研究所との共同研究で開発中である。
  3. 血液浄化療法
    血液透析、血漿交換療法、吸着療法、血球除去療法等の有効性や病態に対する意義について検討している。

関連施設において多数の透析患者様の協力を得て、腎不全の病態・予後に関わる因子を探索し、RA系、カリクレイン‐キニン系、接着因子など関連遺伝子の役割や生理活性物質からの病態解明も進めている。
附属市民総合医療センターにはIBDセンターがあり、UCを初めクローン病など多くの患者様が白血球系細胞除去療法を受けられている。
また、皮膚科疾患や神経疾患に対する血漿交換療法などさまざまな疾患の治療をしており、患者さんのために役立つ、臨床に即した研究をするように心がけている。

分子心血管腎臓内分泌病態制御グループ紹介(略称 GR)

田村功一主任教授、涌井広道講師らのグループは、筑波大学名誉教授村上和雄先生からいただいたお言葉の『from molecules to the whole body』をモットーとして、基礎研究、臨床研究という枠組みにとらわれずに以下の研究課題に精力的に取り組んでいる。

  1. 生活習慣病に対する受容体結合性機能制御因子を足がかりとした病態解明と革新的治療法の創出、
  2. 難治性閉塞性動脈硬化症に対して血液吸着療法を用いたトランスレーショナルリサーチ(厚労省先進医療B)、
  3. 生活習慣病における漢方薬を活用した統合医療(西洋+東洋)の検討、
  4. 収縮機能の保持された心不全におけるCa2+過負荷の役割と新たな治療方法の開発、
  5. 生活習慣病患者に対する血圧変動性を軸とした心血管腎臓病抑制のための包括的治療、
  6. ICTを活用したDiabetic Kidney Diseaseの成因分類と糖尿病腎症重症化抑制法の構築(AMED循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策実用化研究事業)、
  7. 2型糖尿病におけるSGLT2阻害薬の腎障害抑制効果に関する多施設共同研究、
  8. 糖尿病性腎臓病・慢性腎臓病における新規血管新生因子の病態生理学的意義の検討、
  9. ワイヤレスセンサシステムを活用したカフレス式(腕帯不要)の 新規家庭血圧測定手法の検討
  10. 高血圧・腎障害におけるキサンチン酸化還元酵素の意義に関する研究、
  11. L-DOPA新規受容体GPR143の腎臓における機能的意義の検討、
  12. 精緻な疾患レジストリーと遺伝・環境要因の包括的解析による糖尿病性腎臓病、慢性腎臓病の予後層別化と最適化医療の確立研究、
  13. 原発性リンパ浮腫の病態解明およびサイトカインをターゲットとした新規治療法の開発、
  14. 急性腎障害におけるベースライン腎機能の推定法に関する研究、
  15. シャント血流と心予後に関する研究 など

当教室大学院(病態制御内科学)への見学・入学を希望される方は、

横浜市立大学医学部 循環器・腎臓・高血圧内科学教室

田村 功一  
Kouichi TAMURA, MD, PhD, FACP, FAHA, FJSIM
横浜市立大学医学部 循環器・腎臓内科学 主任教授
横浜市立大学大学院医学研究科 病態制御内科学 教授
横浜市立大学附属病院 腎臓・高血圧内科 診療科部長


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